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昏 (百年文庫 89)
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粋筋のあいだで知られる海苔屋「森伝」は、すっかり時代の変化に取り残されていた。没落への悲哀にまみれながら遊びつづける当代主人の、艶やかな最期(北條誠『舞扇』)。客として馴染んだ店の老給仕がついに停年を迎えた。去りゆく季節の情感が美しい、久保田万太郎の『きのうの今日』。女給部屋の露骨な会話に、男客を奪いあう女たちの哀しみが浮かぶ佐多稲子『レストラン洛陽』。かげりゆく世界で光を放とうとした人たちがいたー失われゆく世界への愛惜が滲む三篇。
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